───天津の脚が閃き、その頭を完全に破砕された豚が、無残な屍を地面に転がす。
その動きはニンゲンの域をとうに超えていた。
哀れな豚共には、目で追う事さえ叶わない。
【伽那多】「───笑わなくていいわ。もう、見飽きたし…その汚い顔は」
いつの間にか、天津の足には見た事もない形状のブーツが履(は)かれていた。
一見、少し変わった形状の長靴(ブーツ)に見えるそれは、良く見れば革とは全く異質な光沢を放っている。
べっとりと血と肉にまみれたそのブーツは、まるで生きているかのように不気味に鳴動していた。
まるで、この世の物などではないかのように。
呻(うめ)き声さえ上げているように感じられる、禍々(まがまが)しく、悍(おぞま)しく、そして美しい魔靴(まか)。
刻一刻と地獄めいてゆく光景を目の前にして、ようやく残った豚共が我に返った。
だが───、もうとっくに手遅れだ。
【伽那多】「フフっ……」
【伽那多】「こっちの方が、気持ちイイわね。貴方達の、ただ突っ込んで出すだけのセックスよりは、百倍気持ちイイわ……」
【伽那多】「生身のニンゲン相手に、こんなもの使うのは反則なんだけど───いいわよね? これくらいのハンデ」
【伽那多】「後片付けもラクだし、何より、私のカラダが損傷する心配もないし」
【伽那多】「人を殴れば拳が傷付く。刺し殺しても、うまくやらないと自分も怪我をする。人を壊すのって、ラクじゃないのよ? 知ってた?」
【伽那多】「だから、大目に見てね。チ○ポしかアピールするトコの無いオス豚さん達……♪」
冷たく、淡々と、そしてどこか愉しげに、天津が微笑う。
殺すたびに、天津の表情が陶酔(とうすい)していく。
殺した獲物の血に酔って、その目の狂気がどんどん色濃く艶(つや)を増して行く────