あの女が、俺の前に立っている………
夢────
これは夢────
さっきまで、俺は現実にいて、“悪魔”を殺して――――
どこからが夢だったのか、どこまでが現実だったのか、分からない………
恐ろしいほど鋭利で、どこまでも鮮烈な夢。
無防備な頭の中を、滅茶苦茶に掻(か)き回すような激痛。
頭の中に、電流を流し込まれるような衝撃。
そして――――
いつも必ずその女と逢う。
知らない女。
でも、どこか識(し)ってる気がする………
濡れた赤いその唇に、そそるくらいに美しい微笑を浮かべて。
熱く、甘い吐息。
引き寄せられそうなほど甘い牝臭。
けれど同時に、全く別のものも感じた。
痺(しび)れる殺意。
まるで、切り裂くような、鋭い拒絶。
撃ち貫くような、黝(かぐろ)い―――どこまでも黒い、欲望。
名前も知らないその女。
その女は、いつも決まって最後に囁(ささや)く。
【女】『サヨウナラ───……』
濃密な血の臭いと、凍てつくような冷たい“暴虐(カリギュラ)”を纏(まと)って────
女は最後にもう一度だけ嗤(わら)う─────……
―――そして、夢は砕け散る………………