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イベントCG その6

 ───急ブレーキをかけるように、思い切り、足を踏(ふ)ん張った。
  いきなり、視界に入ったその光景に、思わず思考が停止する。
  鼻を突く刺激臭。
  それは、人間の血の「臭い」ではなかった。
  紛(まぎ)れもなく────“悪魔(カグロイ)”の血臭。
  床に転がる、首の無い残骸。
  それが、悪魔だったモノの屍体なのだと気付くのに、少し時間がかかった。
  ソレは、完全に死んでいた。
  そして、目の前に立っている「彼」は、いつもの状態ではなかった。
  駆けつけた私にも全く気付かず、ひどく憔悴(しょうすい)したように、ただそこに立ち尽くしていた。
  けれど、その静寂な佇(たたず)まいと、その身体からこぼれるものは、まるで逆。
  吐き気を催(もよお)すほど、強烈な感情。
  ひどく荒々しい。
  手負いの猛獣か何かみたいな、激しく昂(たか)ぶったままの威圧感。
  その緊張だけで。
  ぶちぶちと、空気が引き千切(ちぎ)られてゆく。
  限界ぎりぎりまで張りつめた、その空気に圧迫されて、私は呼吸さえ出来なかった。
  今すぐこの場を逃げ出せと、本能が絶叫していた。
  けれど、もう遅い。
  脚なんて、とっくに動かない。
  指先一つ、ままならない。
  目だけが、彼に釘付けになっていた。
  長い時間をかけて、やっと、一呼吸分の息を吐き出した。
  彼に気付かれないよう、密(ひそ)やかに。
  けれど────
  獰猛(どうもう)な捕食者のような冷たい瞳が、ゆっくりと私の方を振り向いた。


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