【美岬】「…やはりそうか。“逸脱者”め」
必殺と言って良い一撃を避けられた北城は、その事実にひどく驚いていた。
そして、その驚きは、あっという間に激しい怒りへと化学変化する。
【美岬】「…これで分かった。お前が───ただの人間などではない事が」
【美岬】「───現時点をもって、お前を“逸脱者(ストレイシープ)”と認識する」
そう勝手に断定し、北城美岬は、凄まじい敵意と殺意を俺に向けた。
その手にした二本の魔剣に、悍(おぞま)しいくらいの力が流れこんでゆく。
同時に、あの“ノイズ”が聞こえ始めた。
世界が震え、おののく声が。
「修正力」が、かかり始めた証(あかし)の歌が。
それは、その魔剣の桁(ケタ)外れの“侵蝕力”を意味していた。
そして、それとは別に、北城の手にした剣から、唸り声のような振動が届き始めた。
唸(うな)る剣。
吼(ほ)える魔剣。
その剣は、俺の悪寒を更に爆発的に増大させた。
あの剣は――――ヤバイ!!
直感が、そう告げた。
【ソラ】(こんなトコで───つーか、人ン家の中でヤる気満々かよ………)
【美岬】「悪いが、“お前”らには個人的な借りがある。だから、死んでくれ」
【ソラ】「勝手な事抜かすな、このチャンバラ女」
【美岬】「怨(うら)んでいいさ。憎み罵(ののし)り、呪っていいさ。それでも私は──お前らみたいな“なれの果て”を、一瞬たりとも許容する事が出来ない」
【美岬】「だから、死んでくれ」
【美岬】「この“唸吼(テンコウ)”に喰われて、塵芥(ちりあくた)と化せ───これは命令だ!」
まさに、問答無用だった。
その不気味な魔剣が、いよいよ亡者のような唸り声を上げ始めた刹那(せつな)、北城美岬は、部屋ごと両断しかねない気勢で、俺の身体に烈火の一撃を叩き込んだ。