【睦月】「やっと、お目覚めか」
【ソラ】「…………先輩?」
【ソラ】「何してんですか? こんなトコで」
【睦月】「随分(ずいぶん)な言い草だな。ずっと傍(そば)にいてやったというのに」
目が覚めると、隣には俺を見下ろしてる先輩がいた。
相変わらず、油断のならない人だ。
【睦月】「気分は良くなったか?」
【ソラ】「まあ、それなりには」
【ソラ】「で―――先輩は、いつからここに?」
【睦月】「少し前からだ。たまたま用事があってな」
【睦月】「そうしたら、お前が一人で寝ていたのを見付けた」
【睦月】「あの女も戻ってきそうにないから、入り口に鍵を掛けて、こうしてお前の寝顔を眺(なが)めていたワケだ」
【ソラ】(……やりたい放題だな、この人は。相変わらず…)
【ソラ】「誰かに見つかって怒られても、俺は知りませんよ」
【睦月】「問題ない」
【睦月】「発覚しない限り、犯罪は犯罪として成立しない」
【睦月】「それに───、私がそんなヘマをやらかすものか」
どこにそんな根拠があるのか、先輩は自信たっぷりにそう言うと、不敵に笑った。
相変わらず、いつも通りの人だった。
【ソラ】「ここで俺に自白してる時点で、発覚してんでしょうが…」
【睦月】「いいや。すでにお前は共犯だ」
【睦月】「だから、これは自白ではなく、共犯者に対する説明なんだ」
【ソラ】「あーはいはい。そうですか…」
そんな屁理屈を言いながら、先輩はどこか熱を帯びた視線で俺を見つめた。